日常の怖い話
帰り道のはなし
普段は歩いて帰る20分の道のりをちょっとだけズルして橋のたもとのバス停からバスに乗ることがある
今日はちょうどバス停にバスが停まってた
中は案の定ガラガラで、入り口近くの1人席に座って
発車を待ってると、後ろから急に声をかけられた
皺皺の老婆で紙袋を見せて
「にいちゃん、これ、合ってるか?」と聞いてきた
中を除くと古い目覚まし時計が入っており
時計の針はちょうど7:15を回ろうとしていた
スマホを見ていた私は「あぁ、合ってますよ」
とだけ言った
老婆は満足げに「せやろ?発車まで1分やな?」
と同意を求めてきたので軽く同意しておいた
まもなくバスが発車して1分くらい走ると、また後ろから話しかけられた
「にいちゃん、今18分やな?合ってるな?」
「そうですね、えぇ...」
私は遠慮気味に答える。
頷く老婆。
次は30秒もしないうちに老婆。
「今20分やな?20分やな?」
あぁ、こりゃ正気の人じゃないな。
スマホは7:19を示していたが「はい」とだけ素っ気なく言った。
バスは2つの停留所を過ぎているがまだ私達だけだ
私の最寄りは次の停留所だったのでもう少しの辛抱とその後も適当に相槌し停車ボタンを押す。
停留所に着き、降りる時に後ろをチラッと見ると
老婆はちょこんと鎮座したままだったので少し安堵してバスを後にした
降りた後は向かいのコンビニで15分ほど立ち読みして時計は7:35分過ぎ
そろそろ帰ろうと思い雑誌を閉じたところで
後ろから一声
「にいちゃん う そ つ い た な あ」
ほんの数時間前のはなし